1.千葉県の最低賃金は「1,195円」に決定しました
千葉県の地域別最低賃金は、次のとおり改定されます。
(令和7年10月3日~)
(令和8年10月1日~)
図1:千葉県最低賃金の改定前後比較
| 区分 | 時間額 |
|---|---|
| 現行(令和7年10月3日発効) | 1,140円 |
| 改定後(令和8年10月1日発効) | 1,195円 |
| 引上げ額 | 55円 |
引上げ率は約4.8%です(55円÷1,140円、当事務所計算)。
千葉労働局は「千葉労働局長(局長:小山英夫)は、千葉県最低賃金を55 円引き上げ、時間額1,195 円に改正することを決定し、本日官報公示しました。」と公表しています(令和8年9月1日)。
千葉県内の事業場で働くすべての労働者について、令和8年10月1日以降は、時間額1,195円を下回る賃金を支払うことができません。
2.全国の状況 ― 加重平均は1,177円(答申額ベース)
厚生労働省は令和8年9月3日、すべての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されたことを公表しました。
図2:令和8年度 地域別最低賃金の全国状況(答申額ベース)
答申された改定額のポイントは次のとおりです。
- 47都道府県で、54円~65円の引上げ
- 改定額の全国加重平均額は1,177円(昨年度1,121円)
- 全国加重平均額56円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さ
- 最高額(1,280円)に対する最低額(1,085円)の比率は84.8%(昨年度は83.4%。この比率は12年連続の改善)
ここが重要:全国の数字は「答申額」です
厚生労働省は、答申された改定額について「都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定」としています。
つまり、
- 千葉県:すでに決定・官報公示済み(10月1日発効)
- 全国の1,177円:答申額ベースの数値
という違いがあります。
発効日は全国一斉ではありません
発効日は令和8年10月1日から12月2日までの間で都道府県ごとに異なります。
複数の都道府県に事業場をお持ちの会社では、「10月1日に全社一斉」ではなく、事業場ごとに、その所在する都道府県の最低賃金額と発効日を確認する必要があります。
3.「目安」と「実際の最低賃金」は違います
最低賃金の改定は、国が全国一律の金額を決める仕組みではありません。次の3ステップで決まります。
引上げ額の「目安」を提示
地方最低賃金審議会
地域の実情を踏まえ審議・答申
決定・官報公示
図3:最低賃金の決定プロセス(3ステップ)
令和8年度の目安は、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円でした。
千葉県はAランク(目安54円)ですが、実際の答申・決定は55円の引上げとなり、目安を1円上回りました。
このように、「目安=そのまま各都道府県の最低賃金」ではありません。実際の金額は、必ず各都道府県労働局または厚生労働省の公表資料で確認してください。
4.対象となるのは、パート・アルバイトだけではありません
地域別最低賃金は、厚生労働省の説明によれば「パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用」されます。
図4:最低賃金の適用対象(雇用形態は問いません)
減額の特例許可制度があります
ただし例外として、一般の労働者より著しく労働能力が低い場合などについては、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金の減額の特例が認められています(最低賃金法第7条)。
対象となるのは、次の労働者です。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
これは「許可を受けること」が条件です。許可なく最低賃金を下回る賃金を支払うことはできません。
特定(産業別)最低賃金にもご注意ください
最低賃金には、都道府県ごとの「地域別最低賃金」のほかに、特定の産業の基幹的労働者に適用される「特定(産業別)最低賃金」があります。
両方が適用される場合は、高い方の最低賃金額以上を支払う必要があります。
自社の業種に特定(産業別)最低賃金が設定されているかどうかは、千葉労働局または厚生労働省「最低賃金制度」サイトでご確認ください。
「自社の賃金が最低賃金を下回っていないか確認したい」というご相談も、お気軽にどうぞ。
無料相談のお問い合わせはこちら5.最低賃金の対象となる賃金・ならない賃金
最低賃金との比較では、毎月支払っている賃金をすべて合計すればよいわけではありません。厚生労働省は、最低賃金の対象となるのは「毎月支払われる基本的な賃金」であるとし、次の6種類の賃金を除外すると示しています。
- 基本給
- 役職手当・職位手当
- 資格手当・技能手当
- 地域手当(固定支給)
- 皆勤手当以外の固定手当
- その他毎月支払う固定的手当
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月超の期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外割増賃金(残業代)
- 休日割増賃金
- 深夜割増賃金のうち割増部分のみ
- 精皆勤手当・通勤手当・家族手当
図5:最低賃金の比較対象となる賃金・ならない賃金(厚生労働省公表情報をもとに作成)
実務上の注意点
- 深夜勤務手当は「全額」が除外されるわけではありません。除外されるのは、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(=割増部分)のみです。深夜時間帯の基本部分は最低賃金の対象に含まれます。
- 上記6項目に該当しない手当(役職手当、資格手当など)は、原則として最低賃金の対象に含まれます。手当の名称ではなく、その手当の性質で判断してください。
(最低賃金の対象 ✔)
(除外 ✖)
図6:深夜割増賃金における最低賃金の対象範囲
6.10月1日までに確認しておきたい7つのポイント
POINT① 時給制の従業員の時給額
千葉県内の事業場であれば、1,195円を下回っていないかを確認します。
POINT② 月給制の従業員の時間額換算
月給制の場合は、次の計算で時間額に換算して比較します。
1か月平均所定労働時間は、年間所定労働時間 ÷ 12 で算出します。
このとき、前章の「対象とならない賃金」(通勤手当・家族手当・精皆勤手当・割増賃金・賞与など)を月給から除外してから計算する点にご注意ください。
POINT③ 固定残業代(みなし残業代)の取扱い
固定残業代は「所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金」に該当するため、最低賃金の比較対象から除外されます。
「基本給+固定残業代」の合計額をそのまま時間額換算して比較すると、実際には最低賃金を下回っているにもかかわらず、下回っていないと誤って判断してしまうおそれがあります。
POINT④ 日給制・出来高払制の従業員
日給制、歩合給制(出来高払制)を採用している場合も、時間額に換算して最低賃金と比較する必要があります。特に出来高払制は、支給額が月によって変動するため、毎月の確認が必要です。
POINT⑤ 雇用契約書・労働条件通知書・賃金規程の確認
実際に支払う給与だけでなく、
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 賃金規程・給与規程
の記載内容も確認しましょう。特に「時給1,140円」のように具体的な金額を記載している場合は、改定後の金額での見直しが必要です。
POINT⑥ 給与計算システムの設定
見落としやすいのが給与計算システムの設定です。
- 時給単価マスタの更新漏れ
- 改定日(10月1日)と給与計算期間が一致しない場合の期間按分
- 割増賃金の単価に改定が反映されているか
これらを、10月分の給与計算を実行する前に確認しておきましょう。給与計算期間が「月末締め・翌月払い」以外(例:20日締め)の場合は、9月分と10月分をまたぐ期間で単価が変わる点に特に注意が必要です。
POINT⑦ 従業員への周知
最低賃金法第8条により、使用者には最低賃金の概要を労働者に周知する義務があります。改定内容を、事業場の見やすい場所への掲示等により周知しましょう。
7.「10月分の給与は11月払いだから、11月から変更でよい」は誤りです
千葉県最低賃金の効力発生日は令和8年10月1日です。判断の基準は、給与の支払日ではなく、労働が行われた日です。
11月に支払うから、
11月支払分から
変更すればよい」
1,195円を適用する
(支払日は関係ない)
図7:よくある誤解と正しい理解
したがって、令和8年10月1日以降に行われた労働については、改定後の1,195円を下回ることができません。「10月分の給与を11月に支払うから、11月支払分から変更すればよい」という考え方は誤りですので、ご注意ください。
8.最低賃金を下回っていた場合はどうなるのか
厚生労働省は、次のとおり説明しています。
- 最低賃金額より低い賃金を労働者・使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
- 使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなければなりません。
(千葉県 1,195円)に違反
の罰金
に違反
の罰金
図8:最低賃金違反の罰則
「本人が納得しているから」という理由は、法的に成立しません。差額の遡及支払いが必要となる点も含め、事前の確認が重要です。
9.【当事務所の見解】「55円上げれば終わり」ではありません
最低賃金が55円上がると聞くと、「最低賃金ぎりぎりの従業員だけ55円上げればよい」と考えがちです。しかし実務上は、それだけでは済まないケースが多くあります。
例えば「最低賃金+50円」で新人の時給を設定している会社の場合、最低賃金が55円上がると、新人とベテランの賃金差が縮まり、場合によっては逆転してしまいます。
図9:最低賃金改定による賃金逆転の例(当事務所作成)
その結果、
- 経験者・ベテラン従業員の不満につながる
- 資格や役職に応じた賃金差の意味が失われる
- 昇給の原資が確保できなくなる
といった問題が生じます。
最低賃金の改定は、自社の賃金テーブル全体を点検する好機でもあります。「法令対応」で終わらせず、賃金体系そのものを見直す機会として活用されることをおすすめします。
10.賃上げに取り組む企業への支援策
厚生労働省および千葉労働局では、最低賃金の引上げに対応する事業主向けに、業務改善助成金、キャリアアップ助成金などの支援策を案内しています。
支給要件・申請期限・受付状況は年度ごとに変更されます。令和8年度の最新の内容は、必ず厚生労働省・千葉労働局の公式ページでご確認ください(本記事末尾の出典欄にリンクを掲載しています)。
生産性向上と賃上げを両立させるうえで、助成金の活用は有効な選択肢のひとつです。活用を検討される場合は、早めのご準備をおすすめします。
11.まとめ
令和8年10月1日から、千葉県最低賃金は1,195円になります。
10月を迎える前に、次の点をご確認ください。
- 時給制の従業員の時給が1,195円以上か
- 月給制の従業員の時間額換算が1,195円以上か
- 対象とならない賃金(通勤手当・家族手当・精皆勤手当・割増賃金・賞与等)を除外して計算しているか
- 固定残業代を比較対象に含めていないか
- 雇用契約書・労働条件通知書・賃金規程の金額表記
- 給与計算システムの単価設定と改定日の反映
- 従業員への周知
- 他県に事業場がある場合、その都道府県の金額と発効日
- 特定(産業別)最低賃金の適用有無
- 賃金バランス(新人とベテランの逆転がないか)
最低賃金の改定への対応は、単なる時給の変更にとどまりません。賃金制度全体を見直すきっかけとして活用いただければと思います。
ご相談について
当事務所では、最低賃金改定に伴う賃金チェック、賃金規程・雇用契約書の見直し、給与計算システムの設定確認、賃金テーブルの再設計までを一貫してご支援しています。
「自社の計算方法が正しいか確認したい」「どこから手をつければよいかわからない」といった段階でも構いません。お気軽にお問い合わせください。
今井久一郎社会保険労務士事務所(CSI&LC IMAI)
千葉県/社会保険労務士
12.出典(一次資料)
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html - 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html - 千葉労働局「千葉県最低賃金を時間額『1,195円』に引き上げ-効力発生日は令和8年10月1日-」(令和8年9月1日)
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/news_topics/_20260901_chingin_00003.html - 厚生労働省「最低賃金制度」地域別最低賃金全国一覧
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/table/page_list_nationallist.php - 厚生労働省「最低賃金制度」最低賃金とは?(罰則・私法上の効力)
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/point/page_point_what.html - 厚生労働省「最低賃金制度」適用される対象者は?(減額特例・特定最低賃金)
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/point/page_point_target.html - 厚生労働省「最低賃金制度」対象となる賃金は?
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/point/page_point_targetwages.html - 千葉労働局 報道発表資料(PDF)
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/002801978.pdf
※本記事の内容は令和8年9月6日時点の情報に基づいています。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。