1. 2026年度「業務改善助成金」の申請スケジュールと改正点

生産性向上のための設備投資(システム導入や機械購入など)を行い、事業場内最低賃金を引き上げた中小企業に対して、その費用の一部(最大600万円)を助成する制度です。2026年度(令和8年度)は、コース構成と手続きのタイムラインに大きな変更があります。

申請スケジュールに関する注意点

📅 2026年度 業務改善助成金スケジュール
  • 申請受付開始:2026年9月1日(春〜夏の事前申請は原則不可)
  • 申請期限:申請事業所の都道府県に適用される地域別最低賃金の発効日の「前日」、または2026年11月30日のいずれか早い日
  • 事業完了期限:交付決定年度の翌年1月31日
10月上旬に地域別最低賃金が改定される地域では、申請できる期間が実質1ヶ月程度となります。9月1日の受付開始後に見積もり依頼や社内計画の策定を始めては期限に間に合わないリスクがあります。7〜8月の段階で相見積もりの取得などの準備を完了させ、9月1日に速やかに申請できる状態を作ることが実務上重要です。

2026年度(令和8年度)の主な改正・特徴

改正ポイント ①

賃金引上げコースが「50円・70円・90円」の3コースに再編
事業場内最低賃金の引上げ額に応じて、50円コース・70円コース・90円コースの3区分となりました。前年度まであった30円コースは廃止され、最低でも50円以上の引き上げが必要です。

改正ポイント ②

支給要件は「事業場内最低賃金が令和8年度地域別最低賃金未満」であること
中小企業・小規模事業者であり、事業場内最低賃金(事業場で最も低い時間給)が令和8年度の地域別最低賃金を下回っていることが要件です。

改正ポイント ③

助成率は事業場内最低賃金の水準で決定

  • 事業場内最低賃金が1,050円未満の場合:助成率 4/5(80%)
  • 事業場内最低賃金が1,050円以上の場合:助成率 3/4(75%)

助成上限額一覧(事業場規模30人未満の事業者)

引き上げる労働者数 50円コース 70円コース 90円コース
1人30万円40万円90万円
2〜3人40万円50万円150万円
4〜5人70万円130万円270万円
6〜7人90万円180万円360万円
8人以上110万円230万円450万円
10人以上(特例)130万円300万円600万円
※「10人以上」は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に適用。
※助成額は「設備投資等にかかった費用 × 助成率」と「上限額」を比較し、いずれか低い方が支給されます。
※事業場規模30人以上の事業者は助成上限額が異なる区分があります。詳細は公式資料をご確認ください。
厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(PDF)

「業務改善助成金を活用してシステム導入を検討したい」という方は、社労士&元SEの視点からまとめてサポートします。

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2. 「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の支給額と加算措置

有期雇用労働者やパート・アルバイトを正社員に転換した際に受給できる助成金です。令和8年度は「重点支援対象者」という区分によって支給額や申請期数が変わるほか、3種類の加算措置が設けられています。

支給額(1人当たり・正社員化コース)

区分 転換前の雇用形態 中小企業 大企業
重点支援対象者 有期雇用 → 正社員 80万円(40万円 × 2期) 60万円(30万円 × 2期)
重点支援対象者 無期雇用 → 正社員 40万円(20万円 × 2期) 30万円(15万円 × 2期)
上記以外 有期雇用 → 正社員 40万円(40万円 × 1期) 30万円(30万円 × 1期)
上記以外 無期雇用 → 正社員 20万円(20万円 × 1期) 15万円(15万円 × 1期)
※「重点支援対象者」とは、(a)雇入れから3年以上の有期雇用労働者、(b)雇入れから3年未満で一定の要件を満たす有期雇用労働者、(c)派遣労働者・母子家庭の母等・人材開発支援助成金の特定の訓練修了者、のいずれかに該当する者をいいます。重点支援対象者は2期に分けて申請できるため支給額が手厚くなります。
※1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20名です。

加算措置(1事業所当たり・いずれも1回のみ)

通常の支給額に、以下の加算を上乗せできます。

加算の種類 中小企業 大企業
① 正社員転換制度を新たに規定し、転換した場合 20万円 15万円
② 多様な正社員制度(勤務地・職務限定、短時間正社員)を新たに規定し、転換した場合 40万円 30万円
③ 転換等に係る情報を自社サイトまたは「しょくばらぼ」に公表した場合 20万円 15万円
※「しょくばらぼ」は厚生労働省が運営する職場情報総合サイトです。自社の正社員転換実績や制度情報を公表することで③の加算が受けられます。

「3%賃上げ要件」に関する注意点

正社員転換にあたっては、「転換後6か月」の賃金を「転換前6か月」と比較して3%以上増額させる必要があります(基本給および定額で支給される諸手当を含む賃金総額で比較)。転換スケジュールを検討する際は、この賃金設計を同時に確認しておくことが重要です。
厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」(PDF)

3. 2026年度に中小企業が活用を検討すべきその他の主要助成金

自社の課題(人手不足・両立支援・教育訓練など)に応じて検討したい、厚生労働省管轄の主要な助成金です。

キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)
パート等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用させた場合に助成する「年収の壁」対策の制度です。1年目の取組では、延長時間と賃金引上げ率に応じて、小規模企業50万円・中小企業40万円・大企業30万円が1人当たり支給されます。
両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コースなど)
育休取得者の業務を代替する周囲の社員への手当支給や、代替要員の新規雇用を支援する制度などがあります。令和8年度の支給額・要件の詳細は、下記の公式資料でご確認ください。
人材開発支援助成金
従業員の職業訓練(研修)費用や訓練中の賃金の一部を助成する制度です。対象コースや助成率の詳細は、毎年度の改正により変わるため、厚生労働省の最新資料でご確認ください。

まとめ:確実に受給するために経営者が取るべき3つの実務

助成金は「事前の計画」と「適正な労務管理」が前提となります。活用を検討される場合は、まず以下の3つのステップから着手してください。

1

GビズIDプライムアカウントの保有確認

各種助成金の電子申請を行うためのアカウントです。未取得の場合は発行に一定の期間を要するため、早めに申請しておきましょう。

2

法定帳簿の整備状況チェック

賃金台帳・出勤簿(タイムカード)・労働者名簿が適正に管理されていること、および未払い残業代がないことが、雇用関係助成金の前提条件です。

3

夏季期間中のプランニング

特に「業務改善助成金」の活用を検討している場合は、9月の申請受付開始に向け、7〜8月中に設備投資計画と見積もり準備を進めてください。

「自社の労務状況でどの助成金が活用できるか確認したい」「法改正に対応した社内規定の改定を並行して進めたい」という経営者様は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。貴社の労務環境とスケジュールに合わせた、的確な申請実務をサポートいたします。