1. まず現状(2026年6月時点)の加入ルールを整理
現在、短時間労働者が社会保険の加入対象となるのは、「対象となる企業」に雇用されており、かつ「4つの条件」をすべて満たす場合です。
対象となる企業:従業員数51人以上
2024年10月の改正により、社会保険の適用対象は「従業員数51人以上」の企業に拡大されました。2022年10月までは101人以上、2024年10月以降は51人以上が対象となっています。
【重要】「従業員51人」の正しい数え方
ここで言う「従業員数」とは、会社の全スタッフの数ではなく、「現在の厚生年金保険の被保険者数」を指します。具体的には、フルタイムの正社員と、週の労働時間および月の労働日数が正社員の4分の3以上のパート・アルバイトの合計です。
※新たに適用拡大で加入対象となる短時間労働者(週20時間以上等の人)は、この51人のカウントには含めません。
対象となるパート・アルバイトの「4つの条件」(現行)
従業員数51人以上の企業において、以下の4要件をすべて満たす短時間労働者は社会保険への加入が義務づけられます。
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1週の所定労働時間が20時間以上※契約上の時間。臨時の残業は含みません
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2所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)2026年10月撤廃※残業代・賞与・通勤手当・家族手当などは除外して計算
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32ヶ月を超える雇用の見込みがある※当初の契約が2ヶ月以内でも、更新の可能性がある場合は当初から対象
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4学生ではない※休学中の方や夜間・定時制の学生は加入対象
2. 【最重要】2026年10月、「106万円の壁(賃金要件)」が撤廃される
2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、2026年10月以降、加入要件のうち「月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されます。
賃金要件が撤廃されると、月収にかかわらず、週20時間以上働く短時間労働者は社会保険の加入対象となります(学生等を除く)。
これが意味すること
これまで「106万円の壁」を意識して扶養の範囲内で働いていたパート・アルバイトも、週20時間以上働いていれば加入対象に変わります。背景として、全国的な最低賃金の上昇により、週20時間働けば月額8.8万円に達するケースがすでに一般的になっており、賃金要件が実質的な意味を持たなくなってきたことがあります。
企業への影響
- これまで扶養内(106万円未満)で働いていたパートの一部が、新たに社会保険の加入対象になる
- 会社の社会保険料負担(法定福利費)が増加する
- 「106万円の壁」を意識していた従業員が、今度は「週20時間」を意識して働き方を調整する動きが出る可能性がある
「自社の対象者を一緒に洗い出したい」「コストシミュレーションを手伝ってほしい」という方はご相談ください。
無料相談のお問い合わせはこちら3. 【さらに先】企業規模要件も2035年10月にかけて段階的に撤廃
「うちは従業員50人以下だから、まだ関係ない」と考えている経営者の方も、油断はできません。2025年の改正法では、企業規模要件(現在の「51人以上」)そのものを段階的に撤廃することが法律として確定しています。
| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 2024年10月(実施済み) | 企業規模要件が「51人以上」に拡大 |
| 2026年10月 | 賃金要件(月額8.8万円以上=106万円の壁)の撤廃 |
| 2027年10月以降 | 企業規模要件の段階的な撤廃が開始 |
| 2029年10月 | 常時5人以上の個人事業所が、全業種で適用対象に(現在は法定17業種) |
| 2035年10月 | 企業規模要件が最終的に撤廃 |
| ※詳細な施行時期は政令等で具体化されるため、公開直前に厚労省特設サイトで最新情報を必ずご確認ください。 | |
現時点で50人以下の企業であっても、近い将来、確実に「週20時間以上働くパート・アルバイト」を社会保険に加入させる時代がやってきます。今のうちから人員配置やシフトの管理、人件費の予算組みを見直しておくことが、未来の経営を守るポイントです。
4. 企業が今すぐ進めるべき「4つの対応手順」
自社が現在「51人以上」に該当する場合はもちろん、50人以下の企業も将来に備えて以下の手順で準備を進めることをおすすめします。
加入対象者の正しい把握
雇用契約書や賃金台帳を確認し、2026年10月以降に要件を満たすことになる従業員が何人いるかを正確にリストアップします。
📌 「雇用保険には入っているけれど、社会保険には入っていないパートさん」は週20時間以上働いている可能性が高いため、特に要チェックです。
会社負担分のコスト試算(シミュレーション)
社会保険料は労使折半(会社と従業員で半分ずつ負担)です。新たに加入する従業員が増えることで、会社の法定福利費がどれくらい増加するかを事前に試算します。
📌 厚生労働省の特設サイトには事業主向けの「社会保険料かんたんシミュレーター」が用意されています。
対象となる従業員への丁寧な説明(面談)
扶養の範囲内で働きたい従業員は、手取り額が一時的に減ることを懸念する場合があります。「将来もらえる年金が増える」「傷病手当金・出産手当金など万が一の保障が手厚くなる」というメリットも合わせて、個人面談などで丁寧に伝えることが定着・離職防止のカギとなります。
⚠️ 一方的な通知ではなく、対話の機会を設けることが、労働時間調整や雇い止めをめぐるトラブルの回避にもつながります。
書類の作成と年金事務所への届出
対象者が確定したら、「被保険者資格取得届」などの必要書類を作成し、年金事務所へ速やかに提出します。
まとめ
社会保険の適用拡大は、企業にとってはコストや事務負担の増加という側面もありますが、見方を変えれば「手厚い福利厚生をアピールして、優秀なパート・アルバイトを確保・定着させるチャンス」でもあります。
- 2026年10月から「106万円の壁(月額8.8万円の賃金要件)」が撤廃される
- 51人以上の企業では、週20時間以上働く短時間労働者が月収に関わらず加入対象に
- 企業規模要件も2027年10月以降、段階的に撤廃(2035年10月に完全撤廃)
- 今すぐ対象者の洗い出し→コスト試算→従業員への丁寧な説明の3ステップを進める
「自社のカウント方法が合っているか不安」「従業員への説明や、その後の働き方の調整がうまくできるか心配」という場合は、ぜひ当事務所へご相談ください。対象者の正確な洗い出し、コストシミュレーション、さらには社会保険の加入手続き(書類作成・届出)の代行まで一貫してサポートいたします。